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新潟大学工学部電気電子工学科
 /研究推進機構超域学術院
加藤・新保・馬場・Bas 研究室

有機エレクトロニクスと電子デバイス基礎・応用研究

 有機材料を用いたエレクトロニクスの基礎的な研究は、1970年代から長く行われてきましたが、最近になって液晶ディスプレイや有機ELなど身近な所での応用が進んできており、益々活発な研究分野となってきています。有機デバイスは、これまでのシリコン系の無機デバイスとはまた違う利点を持っており、分子を組み立てていくことによりデバイス化を行うため、曲げ伸ばすのできるフレキシブル化、印刷技術によるデバイス化もでき、さまざまな可能性を秘めています。

 我々は特に、金属薄膜表面近傍に励起する"表面プラズモン"を用いて、有機薄膜・デバイスの高感度評価技術の開発を行っています。また、表面プラズモンの励起により大きく強められた電界を利用した、次世代高効率有機デバイスの基礎・応用研究を推進しています。これらの具体的な応用例としては、有機太陽電池、有機FET、バイオセンサーなど多岐に渡ります。多くの可能性を秘めた、次世代有機電子デバイスの研究を一緒に行ってみませんか。

 


       
        真空装置を用いた有機デバイスの作製


表面プラズモンを用いた薄膜評価及びデバイス応用

ガラス/金属薄膜/誘電体の構造にガラス側から光を全反射させると、ある角度において金属表面の自由電子振動と光の結合モードである表面プラズモンを励起され、反射率が低下します。これは共鳴現象であり、金属及び誘電体の膜厚や複素屈折率に敏感に応答しますので、これを用いて薄膜の構造・光学物性評価やセンシングが可能となります。我々はこの方法を用いた新規な複合センサに関する研究を行っており、例えばガラス部分を水晶基板に置き換えた水晶振動子との複合センサを提案し、日本国内および米国で特許を取得しています。この手法では、微量な物質の吸着を光学的な手法と音響的な手法により同一基板上で同時に測定できるため、吸着物質の構造評価に非常に有用と考えています。さらには、表面プラズモンのエネルギーが再び目に見える光となって放射される現象に着目し、新規な光情報素子やセンサとしての可能性を模索しています(図1)。

 図1.表面プラズモン放射光スペクトル(放射角に強く依存したスペクトルが得られています)

 

 

表面プラズモン共鳴励起増強電界を利用した有機太陽電池応用

 最近、有機ELなど曲げることのできるディスプレイが新聞などでも話題になってきていますが、有機太陽電池も曲げたりシワシワにしたりできることから、湾曲した屋根やカーテンとしてなど、新たな太陽電池の形態が可能であるとして様々な研究が世界的に行われています。また、有機太陽電池は高価な装置を必要とせずに高分子を塗るだけで作製が可能であることから、低コストで様々な利用法が考えられています。しかしながら、大きな問題点の一つは、太陽電池に使用される有機材料は、無機材料に比べて抵抗率が大きいことから、太陽の光を吸収して電気に変換する層を厚くすることができません。このために、最適膜厚は100nm程度にとどまり、このために入射する太陽光の多くは光電変換層で吸収されずに反対側の電極で反射されて外部へ逃げてしまい、太陽光の利用効率が大きく下がってしまいます。そこで、我々は図2(a)のように有機太陽電池電極表面にナノメートルサイズの加工を施すことにより、伝搬してきた入射太陽光を表面から出ていかない、すなわち表面に閉じ込められる光である表面プラズモンを共鳴励起し、光吸収量(光励起キャリア)を多くして、光電変換特性の向上を試みています。また、この表面プラズモンは光を表面に閉じ込めるだけでなく、光の電界強度を増強する効果があるため、有機太陽電池のような薄い活性層のデバイスに対しては大いに有効であると考えています。この結果、光電流量は、表面プラズモン効果がある場合は、無い場合に比べて2倍大きくすることが可能であるという結果が得られています。さらに、我々はナノ構造上の表面プラズモンが共鳴励起している範囲内に、金や銀などの金属微粒子(5nm〜20nm)を配置することで、さらなる光電流の増大を得ることを可能として来ています。金属微粒子は、光を入射すると金属表面に局在する局在プラズモンを励起します。このため図2(b)のように、ナノ構造電極上に金属微粒子を配置すると表面プラズモンと局在プラズモンが同時に励起し、その相互作用もあり光電変換層内において非常に大きな電界を得ることが可能となります。この結果、これまで我々は、ナノ電極構造も金属微粒子も無い通常の電極構造に比べて7倍もの大きな光電流を得ることができています。これらの結果は、特許の取得や学術論文誌への発表を始め、国際会議で複数の学生がポスター発表賞を受賞するなどしてきています。今後も実用化を目指すべく研究を進めている所です。

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______________________(a)

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図2.(a)ナノ構造電極を有する有機太陽電池構造、(b)金属微粒子がナノ構造電極上に配置された光電変換デバイス

 

 この他、新規な電極構造を用いた電界紡糸法の提案、電荷発生層挿入有機薄膜トランジスタや表面プラズモンバイオセンサーなど、様々な研究を行っています。

本研究グループでは、国内外の研究者との共同研究や交流のもと個々の力を結集して研究内容のさらなる高度化を目指すとともに、優れた技術者・研究者となる学生を育成していきたいと考えております。我々の研究に興味をお持ちの方は、ぜひお知らせ下さい